”気候変動” に向けて,私たちにできること
はじめに
気候変動とは,地球と太陽との間でおこなっているエネルギーの交換システム(気候)がさまざまな原因で変動することです。
気候が変動すること自体は自然なことです。しかし,急激な気候変動は自然環境に大きな影響を与えます。
以前,二酸化炭素排出量を減らす取り組みについて解説しました。この中では生活における環境対策について述べました。
ここでは,もっと根本的な問題,つまり気候変動によって“自然環境”はどう変わるかという点についてわかりやすく解説していきます。
1 気候変動はなぜおきるのか?
気候は,太陽から放出されたエネルギーを地球のさまざまなところでさまざまな形で受け取り,熱や物質が循環されることで維持されています。
ただ,毎年同じように熱や物質が循環することはなく,多少の変動はあります。
その変動を気候変動というのです。
本来は気候変動とは平均的な気候と比べた年度ごとのばらつきを示しています。似た言葉に気候変化があります。
気候変化は,平均的な気候が変化していくことをいいます。簡単に説明すると気候変動は短期的にみたもので,気候変化は長期的な視点でみたものといえるでしょう。
しかし,実際は気候変動が地球規模でみた長期的な変化として捉えられつつあります。
気候変動がおきる原因は「自然現象によるもの」と「人間活動が原因によるもの」の2種類があります。
自然現象による原因は,火山の噴火や太陽活動の変化があります。火山が噴火すると大気中の微粒子数に変化が起こります。大気中に飛んだ微粒子は太陽光が地球に到達することを妨げ気候に変動がおきます。しかし,微粒子は時間と共に洗い流され,気候変動は一時的なことで終わることが多いのです。
問題は人間活動が原因でおこる気候変動です。人間活動は火山の噴火のように一時的なことではありません。
温室効果ガスの排出は長く続き,気候に与える影響も年々大きくなっていきます。気候変動がおきる原因は,自然現象と人間活動の2種類ですが,気候変動のスピードを加速させている原因は人間活動にあります。
2 気候変動が“自然環境”に与える影響
急激に加速している気候変動は,自然環境に影響を与えています。
自然環境への影響は3つあります。
ひとつ目は「生態系への影響」です。
気候変動によって気温が上昇すると地上だけでなく海の中にも影響が広がります。住むところを奪われて命を落とすだけでなく,急激な環境の変化に対応できず絶滅していく生物も増えるでしょう。
ふたつ目の影響は「森林火災の増加」です。
日本での森林火災の原因はたばこの不始末など人の行動が原因であることもあります。しかし,世界規模でみると森林火災の原因は乾燥である気候変動が原因なのです。高い気温は,森林から水分を奪います。
乾いた森林は燃えやすく,一度火災が起きれば燃え広がるスピードはとても速いです。広範囲の森林火災は,大量の二酸化炭素を大気中に放出します。二酸化炭素は温室効果があり,地球温暖化を進める悪循環になるのです。
最後は「島や湿地の消滅」です。
気候変動で海水温が上昇すれば海氷がとけだして海水が増えます。海面は上昇し,水没する島が続出します。さらに湿地からは水分が奪われ,湿地特有の自然環境は壊される可能性があるのです。
3 “自然環境”の変化によっておきた災害
自然環境の変化は大きな災害をもたらしています。
世界ではカナダやオーストラリアの山火事,最近ではギリシャやカリフォルニアでも熱波による山火事が発生しました。海水温の上昇により,台風も強さを増しています。
雨の降り方も変わり,線状降水帯が発生し各地で土砂崩れによる被害が出ています。線状降水帯とは,雨を降らせる積乱雲が帯状に集まったものです。
この線状降水帯の発生も気候変動による自然環境の変化が原因といわれています。
通常ならば,積乱雲が発生して雨を降らせても,それは一時的な雨で終わります。
しかし,線状降水帯は,次から次へと積乱雲が発生し雨を降らせ続けるのです。たくさんの雨を含んだ土地はやがて耐え切れなくなり崩れます。それが土砂崩れです。
積乱雲の材料である水蒸気は,海が温まることで作られます。気候変動で海が温められることによって常に水蒸気が供給され積乱雲が長く発生し続けるのです。
4 IPCCの報告書から読み取る! これからの気候変動
2021年8月8日(日本時間)にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)から衝撃的な報告書が発表されました。
報告書には「地球上でおきている気候変動の原因は人間活動にある」と書かれています。
さらに報告書には,これからの気候変動についても二酸化炭素の排出量パターン別に,具体例が書かれています。
それによると,二酸化炭素排出量の増加がこのまま続いた場合は,2100年に平均気温は4度以上上昇する可能性があります。
平均気温が4度以上上昇すれば,東京の予想平均気温は43.3度になるというデータもあります。そうなると,人間は日中の活動が制限されることになるでしょう。
これは,二酸化炭素排出量の増加による最悪のシナリオが示されたことになるでしょう。
5 おわりに
IPCCの報告書は衝撃的な事実を私たちに伝えています。
今すぐ人々が行動を変えても,すでに放出された二酸化炭素の影響があり,気候変動を完全に抑えることはできません。
しかし,これからの私たちの行動で気温の上昇幅を抑え,未来の自然環境への影響を減らすことはできます。
IPCC報告書は,2050年には二酸化炭素の排出量を40%から70%減らす必要があるとしています。私たちが,早急に取り組むなければならない対策は,二酸化炭素排出量を抑えることなのです。