遊びと学び編・・サッカーに学ぶ「役割分担」── 一人じゃ勝てないからこそ、仲間がいる【役割分担を学ぶワークシート付き】
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はじめに:「ポジション」があるからこそ、サッカーは面白い
サッカーをやったことがある人も、ない人も、試合を観たことはきっとあるはず。その中で気づいたことはありませんか?
「あの選手、ゴールを守ってる」
「あっちの選手はずっと走ってるけど、点を決めたのは別の人」
そう、サッカーは一人ひとりに違った“役割”が与えられているスポーツ。点を取る人、守る人、ボールを繋ぐ人──。つまり、サッカーは「役割分担」があってこそ、初めてチームとして機能する競技です。
今回はそんなサッカーから、子どもにも大人にも必要な“役割分担の力”を学んでみましょう。遊びの中にある“教育のヒント”、あなたもきっと見つけられるはずです。

第1章:「全員が点取り屋」では勝てない理由
サッカーで「全員フォワードにして、全員でゴール狙えば勝てる!」という発想、一度は思いついたことがあるかもしれません。けれど、それでは逆に負けてしまうのです。
✅ なぜなら…
• ゴールを守るキーパーがいない
• ディフェンスがいないから、すぐにカウンターをくらう
• ボールを運ぶミッドフィールダーがいないため、連携が崩れる
サッカーの面白さは、攻守のバランスと連携にあります。つまり「自分がやりたいこと」ではなく、「チームに必要なこと」に目を向ける視点が求められるのです。
第2章:サッカーで身につく「役割分担力」とは?
サッカーはただの球技ではありません。以下のような力を自然と身につけることができます。
✅ 1. 自己理解:自分はどんなポジションに向いている?
• 足が速い → サイドのウイングや守備
• パスが得意 → ボランチや中盤の司令塔
• 判断力がある → ゴールキーパーや最後のディフェンスライン
サッカーでは、自分の強みを見つけて活かす体験ができます。
✅ 2. 他者理解:仲間の得意を知り、助け合う
• 「この子はドリブル上手だから、パスで支えよう」
• 「今日はキーパーが調子悪そうだから、もっと守備を厚くしよう」
こうした判断は、仲間の状態を察して行動を変える力(共感性・柔軟性)を育てます。
✅ 3. 組織理解:全体の中で自分の役割を果たす力
役割分担とは、「自分が目立たなくても、全体が機能するように動く」こと。これは、社会生活や仕事においても非常に大切なスキルです。

第3章:実践事例と具体的な成果
📘 実践例①:小学生サッカークラブの「交代式ポジション制度」
• 子どもたちに毎週、違うポジションを体験させる
• 「得点王」よりも「チームに貢献した動き」にMVPを出す仕組み
効果:
• 自分以外の役割への理解が深まる
• 「キーパーが一番大変だ」と気づき、守る側へのリスペクトが生まれる
• 試合後の反省会では「〇〇くんのカバーが助かった」という言葉が自然に出るように
📘 実践例②:中学校の体育授業で「役割分析シート」を活用
• 各ポジションの役割をチームごとに話し合い、戦略を立てる
• 試合後に「自分の役割がどれだけ果たせたか」を自己評価
成果:
• 作戦会議から生徒同士の“認め合い文化”が育つ
• 点を取れなかった子も「守備で流れを作った」と言ってもらえる
• 協働性や自己効力感(=自分は役に立ったという実感)が向上
第4章:世界のサッカーと「役割教育」
🇳🇱 オランダ:トータルフットボールで「役割の流動性」を育む
• 選手全員が状況によってポジションを入れ替え、臨機応変に動く
• 子どもの頃から「自分の役割は一つではない」ことを学ばせる教育方針
→ 固定観念にとらわれない「柔軟な役割分担力」が育つ
🇩🇪 ドイツ:ジュニア年代で「リーダーとサポーター役」を交代制で実施
• キャプテン制を週替わりで導入
• 「目立つ役」だけでなく、「支える役」も順番に経験
→ 子どもたちに「どの役割もチームには必要だ」と体感させている
第5章:家庭でもできる“サッカー式役割分担トレーニング”
✅ 家事版ポジション割り当てゲーム
• ゴールキーパー:忘れ物チェック係
• ミッドフィルダー:リビングの整理整頓
• フォワード:買い出しや料理の仕上げ
→ 家庭の中でも「得意なこと」や「やってみたいこと」を活かす分担で“チーム家族”を作れます。
✅ 親子対話:試合後インタビュー風ふりかえり
• 「今日の一番のプレーは何だった?」
• 「自分が支えられたと思った場面は?」
• 「仲間を助けたと思った瞬間は?」
→ 自然な対話の中で、役割と貢献の意識を言語化する力が育ちます。
まとめ:ポジションは“自分らしさ”の形でもある
サッカーにおける“役割分担”とは、ただ「仕事を割り振る」ことではありません。むしろ、「自分にしかできないことを見つけ、それを信じてやりきる力」の育成につながります。
• 誰もが点を取らなくてもいい
• 守ることも、繋ぐことも、すべて等しく価値がある
• それを子ども自身が体験できるスポーツが、サッカーなのです
ゴールは、みんなで決めた一歩の先にある。だからこそ、チームで学ぶ「役割分担」は、生きる力の土台になる。
【役割分担を学ぶワークシート】
📘 チェックシートの構成内容
【1】基本情報
授業日・クラス・活動名など、記録の前提条件を明記できます。
【2】観察チェックリスト
以下のような非認知能力の発揮場面を観点ごとに観察・評価:
・積極的に仲間に声をかけたか
・自分の役割を理解し行動できたか
・他者の意見を受け止めていたか
・活動への集中・自己制御力が見られたか
✅ → ○やメモを使って記録が可能です。
【3】個別観察メモ
印象的だった生徒の言動や、声かけの内容を自由記述。
【4】使用した声かけの記録
教育的・支援的な声かけのストックと、それを使った場面を記録。
例:「最後までやりきったね、自分でどう思った?」
【5】次回へのヒント
次に意識したい声かけ
観察して気づいた「伸ばしたい非認知能力」などを記録。
🏫 活用のヒント
・体育・グループ活動・総合学習など、協働的な学習場面に最適
・年間通して非認知能力の成長を追う記録帳としても活用可能
・「見える化された観察メモ」は、保護者への面談資料にも活用できます