気候変動によって変わる”私たちの暮らし”
はじめに
気候変動は自然環境を変え,私たち人間の暮らしも変えつつあります。
気候変動に対する取り組みは世界規模で始まってはいますが,今から暮らし方を変えても気候変動は急には止まりません。人類の歴史の中で気候変動は私たちの暮らしをどう変えて,これから先どう変えていくのかを考えてみます。
気候変動によって変わった私たちの“暮らし”
気候変動によって私たちの暮らしは少しずつ変わってきました。
例えば,気候変動によって雨の降り方は大きく変わりました。2013年までは重大な災害が起きる警告となる大雨警報が一番強い警告であり警報でした。
しかし,気候変動により雨の降り方はより激しくなりました。雨による災害が急増し,2013年に警報の上をいく特別警報が設けられました。
また気候変動は光化学スモッグが発生する頻度もあげています。光化学スモッグは,気温が高い風の弱い日に発生します。
大気中の窒素酸化物や炭化水素が太陽の紫外線と反応して光化学スモッグ(光化学オキシダント)を発生させます。
光化学スモッグが発生しているときに屋外で運動や作業をしていると目がチカチカしたりのどが痛くなったりします。光化学スモッグは,気候変動によって気温が上昇すればするほど発生頻度が多くなり,私たちの暮らしに与える影響は多くなるのです。
これから先,気候変動によって“暮らし”はどうなるのか
気候変動は,これからも進行していきます。今すぐに気候変動に対する行動をおこしたとしても,すでに排出されている温室効果ガスの影響は数十年先まで続くといわれています。これから先,私たちの暮らしはどのように変わるのでしょうか。
まず,台風は今よりも強くなるといわれています。近年の台風は,それまでは考えられなかったような地域に大きな被害を出すようになりました。気候変動により海水温が上昇しているため,台風の勢力が衰えることなく上陸するからです。これから先も台風はより強くなります。風速90mの風が吹き,倒壊する家も多くなるでしょう。水害も増え,人が住める場所が制限されるかもしれません。また,気温上昇によって昼間の活動ができなくなる可能性も指摘されています。
さらに気候変動は,食料危機にも関係します。干ばつが続けば植物が育たなくなります。植物が育たなければ,植物を食べる動物も減ります。農業を営んでいる場合は,今まで通りの品種では育たず,品種改良や転換を求められます。
気候変動には「緩和策」と「適応策」で対応
気候変動が私たちの暮らしに与える影響が大きいからといって,今すぐに気候変動を止めることはできません。気候変動に対しては緩和策と適応策で対応します。
緩和策とは,気候変動を抑えたり緩やかにしたりするために働きかける策です。例えば,気温上昇に対する緩和策は温室効果がある二酸化炭素の排出を抑えることが緩和策になります。
一方の適応策は,気温上昇という現実を受け入れて,なんとか暮らしていく方法です。例えば,気温上昇しても育つように稲を改良したり,大雨に備えて避難場所を確保したりすることが適応策です。
まだ改善の余地がある気候変動に対して緩和策を取り入れながら,すでにやってくることが決まっている気候変動に対しては適応策で対応していくことが求められます。
気候変動のSDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」とは・・・
SDGsの目標13は「気候変動に具体的な対策を」です。
目標13には3つの目標が掲げられています。ひとつ目は「気候変動による災害などがおきたときでも立ち上がる力を国が備えておく」です。発展途上国や取り残されている地域に対しても気候変動に対して対策を考えたり管理できたりする仕組みの構築を目指します。
ふたつ目は「気候変動の対応を国が政策や計画に盛り込むこと」です。ひとり一人の対策だけでなく,国として動くことで大きな成果を生むことができます。日本では国土交通省が国土交通省気候変動適応計画,農林水産省は農林水産省気候変動適応計画のように各分野で対策と計画をつくっています。
最後は「気候変動の速度をゆるめたり警戒したりする力の教育と啓発」です。気候変動についての知識を高めることは,緩和策にも適応策にも通じる大切なことです。日本では出前授業や画像を使った授業が行われています。イタリアでは2020年から公立学校で気候変動の授業が必須科目となりました。
おわりに
気候変動で私たちの暮らしが変わることは明白です。緩和策と適応策の両面から対応し,乗り越えていくことも大切ですが,一番大切なことは気候変動を「世界のどこかでおきていること」と考えるのではなく,自分ごととして考えることです。
イタリアでは気候変動が必須科目となり年間33時間という多くの時間が気候変動に当てられます。子どものころから気候変動や地球温暖化について考えることで,より身近な暮らしと関係づけながらたくましく生きていくことができるのではないでしょうか。