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自然が勝手に出す「課題」に挑む編~冒険の主導権が自分にないとき,人は成長する~

  
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自然が勝手に出す「課題」に挑む編~冒険の主導権が自分にないとき,人は成長...

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はじめに

思い通りにならない瞬間が,人を一段引き上げる
旅や冒険に出ると,「予定通りにいかない」「想定していなかった出来事が起きる」という場面に,必ず出会います。

急な天候の変化,道の崩れ,思った以上の疲労。
自然の中では,人の計画よりも,自然の都合が優先されます。このとき私たちは,はっきりと気づかされます。

冒険の主導権は,自分にないという事実に。
このブログでは,「自然が勝手に出してくる課題」に向き合う体験が,なぜ人を成長させるのかを,人間の学びと集団行動の視点から解説します。

実践による具体的な成果や,諸外国の事例も交えながら,読んで楽しく,読み終えたあとに「思い通りにならない状況」への見方が変わる内容を目指します。

第1章 なぜ私たちは「主導権を握りたがる」のか

1-1 コントロールできると安心する人間の性質

人は,自分で決められる状況に安心を感じます。スケジュール,ルート,役割分担。これらが明確であるほど,不安は減ります。

現代社会では,この「コントロールできる状態」が重視され,計画通りに進むことが,成功や効率の指標とされがちです。

1-2 自然は,その前提をあっさり壊す

しかし自然の中では,計画は「参考意見」にすぎません。風が吹けば進めないこともある。雨が降れば立ち止まる判断が必要になる。

自然は,私たちの都合を一切忖度しません。ここで初めて,人は「自分が主役ではない世界」に足を踏み入れるのです。

自然は,私たちの都合を一切忖度しない

第2章 自然が勝手に出す「課題」とは何か

2-1 誰にも出題されていない問い

自然の課題には,「これをやりなさい」という説明がありません。

・進むか,引き返すか
・今日はここまでにするか
・誰がどの役割を担うか

すべてが,その場で立ち上がる問いです。この問いに,正解は一つではありません。その状況で,最善と思われる判断を選び続けるしかないのです。

2-2 課題は選べないが,向き合い方は選べる

自然体験の本質は,「課題を選べないこと」にあります。しかし同時に,どう向き合うかは,自分たちで選べるという自由も与えられています。この二重構造が,人の思考と行動を大きく鍛えます。

第3章 主導権がない状況で育つ力

3-1 柔軟な判断力

主導権がない状況では,「決めたから進む」という姿勢は通用しません。状況を読み,判断を修正し,ときには決断を撤回する。この繰り返しが,柔軟な判断力を育てます。

3-2 他者と相談する力

自然の課題は,一人では解決できないことがほとんどです。疲れている人がいれば,ペースを落とす必要がある。不安を感じている人がいれば,話し合いが必要になる。ここで育つのは,「引っ張る力」ではなく,集団で考える力です。

自然の課題は,一人では解決できないことがほとんど・・不安を感じている人がいれば,話し合いが必要になる。

第4章 実践による具体的な成果と満足度の向上

4-1 子ども向け自然体験での成果

自然の判断を尊重するプログラムでは,

・指示待ちが減った
・自分の意見を言う回数が増えた
・「失敗しても学びになる」という発言が増えた

といった変化が見られました。特に,予定変更を「残念」ではなく「いい判断だった」と振り返る姿が印象的です。活動後の満足度も高く,「思い通りじゃなかったけど,楽しかった」という感想が多く聞かれました。

4-2 大人・研修現場での変化

大人の冒険型研修では,「自分がコントロールしようとしすぎていた」「委ねることで,視野が広がった」という気づきが生まれます。

結果として,職場でも

・予定変更に強くなった
・他者の判断を尊重できるようになった

といった行動変容が報告されています。

第5章 諸外国に見る「主導権を手放す冒険教育」

5-1 ニュージーランド:自然主導の学び

ニュージーランドでは,自然を「教師」と捉える冒険教育が広く行われています。天候や地形が学びの中心となり,人はそれに適応する側です。

5-2 北欧:フリルフスリフツの思想

北欧の自然文化では,「自然と共にある」ことが重視されます。計画よりも,その日の自然の状態に合わせて行動する姿勢が,子どもの頃から育てられています。

5-3 カナダ:リスクと共に学ぶ教育

カナダのアウトドア教育では,管理しすぎない「適度な不確実性」が大切にされています。主導権を完全に人が握らないことで,本物の判断力が育つと考えられています。

第6章 日常に活かす「主導権を手放す視点」

6-1 思い通りにならない前提で動く

すべてを計画通りに進めようとしない。最初から「ズレるもの」と考えておく。それだけで,心の余裕は大きく変わります。

6-2 状況に任せる勇気を持つ

自然の中で学ぶのは,「支配しない強さ」です。流れを感じ,必要なところだけ介入する。この姿勢は,人間関係や仕事にも応用できます。

自然の中で学ぶのは,「支配しない強さ」・・この姿勢は,人間関係や仕事にも応用できる

おわりに

冒険の主導権を手放したとき,人は一段自由になる
自然は,私たちに問いを投げかけます。それは,親切でも,分かりやすくもありません。しかし,その問いに向き合う中で,人は「自分がすべてを決めなくていい」ことを学びます。

冒険の主導権が自分にないとき,私たちは初めて,世界と対話し始めるのかもしれません。思い通りにならない出来事に出会ったとき,それを「邪魔」ではなく「課題」と捉えられたなら,その瞬間,あなたはすでに一歩,成長しています。

自然は今日も,何も言わずに,次の課題を用意しています。


参考文献(日本語表記・重要順)

1.デューイ,J.(1938)『経験と教育』松野安男訳,岩波書店.

引用理由:
本研究・実践において扱う「自然が勝手に出す課題」「主導権が学習者にない状況での成長」は,デューイの経験主義的教育論を理論的基盤としている。
デューイは,学びを「あらかじめ設定された目標への到達」ではなく,「環境との相互作用の過程」として捉え,特に予測不能な状況との関わりが,思考と判断を深めると論じている。本テーマにおける自然環境は,まさに学習者の意図を超えて作用する環境であり,その中で生起する経験を教育的価値として位置づけるために本書を引用する。

2.コルブ,D.A.(1984) 『経験学習―経験が学習と発達の源泉である』金井壽宏監訳,ダイヤモンド社.

引用理由:
冒険の主導権が学習者にない状況であっても,人が成長できる理由を説明する理論的枠組みとして,コルブの経験学習モデルは不可欠である。
このテーマで扱う自然体験では,具体的経験が計画通りに進まないことが前提となるが,その後の省察・概念化・再実践を通して学びが生成される点が,コルブの循環モデルと一致する。予測不能性が学習を阻害するのではなく,むしろ学習を促進する要因となることを示すために引用する。

3.プリースト,S.・ガス,M.A.(2018) 『アドベンチャープログラミングにおける効果的リーダーシップ』第3版,ヒューマン・キネティクス社.

引用理由:
自然体験・冒険教育において,「すべてを人が管理しない」「主導権を部分的に自然や状況に委ねる」指導姿勢の重要性を実証的・実践的に論じている点から引用する。
本書は,冒険教育におけるリーダーの役割を「制御する存在」ではなく,「学習が生まれる環境を整える存在」と定義しており,本テーマの「主導権を手放すことで成長が生まれる」という主張を,実践理論の面から補強する文献である。

4.ロインズ,C.(2002) 「生成的パラダイム―アドベンチャー教育における変容的学習」 『アドベンチャー教育・野外学習研究誌』第2巻第2号,113–125.

引用理由:
自然が出す課題を「乗り越える対象」ではなく,「学習を生成する契機」と捉える視点を理論的に位置づけるために引用する。
ロインズは,アドベンチャー教育における学びを,事前に設計された成果の達成ではなく,環境との関係性の中で生成される変容的学習として説明している。この考え方は,本テーマにおける「課題は選べないが,意味は後から生成される」という構造と強く対応している。

5.ブラウン,M.・フレイザー,D.(2009) 「リスク概念の再評価と教育的代替案の探究」 『アドベンチャー教育・野外学習研究誌』第9巻第1号,61–77.

引用理由:
自然体験における「不確実性」「リスク」を,排除すべきものではなく,教育的価値を持つ要素として再定義する視点を提供しているため引用する。
このテーマでは,主導権が自分にない状況が不安や失敗を伴う可能性を前提としているが,ブラウンとフレイザーは,管理しすぎないリスクこそが判断力や責任感を育てると論じている。自然が勝手に出す課題を肯定的に捉える理論的裏付けとして位置づけられる。