食べ物の”好き嫌いが激しい”児童生徒への対応：３つのポイントと４つの実践
はじめに
食べ物の好き嫌いは，多くの児童生徒が抱える一般的な問題であり，健康的な成長や学習のパフォーマンスにも影響を与える可能性があります。
私も実際に指導経験がありますが，特に学校給食や家庭での食事において，偏った食事習慣は栄養バランスの欠如を招き，子どもの成長に悪影響を及ぼすことがあります。
教師として，食べ物の好き嫌いが激しい児童生徒に対して，どのように対応し，指導するべきかについて，具体的な声掛けや指導技能を中心に考察していきます。
1 食べ物の好き嫌いの背景
食べ物の好き嫌いの原因
児童生徒が特定の食べ物を嫌う理由はさまざまです。味覚や食感の好み，過去の経験，アレルギーや食物不耐症，家庭の食文化や食習慣など，多くの要因が影響しています。これらの原因を理解し，個々の児童生徒に適した対応を取ることが必要です。
食べ物の好き嫌いの影響
食べ物の好き嫌いが激しい児童生徒は，栄養バランスの欠如により健康問題を引き起こす可能性があります。また，給食の時間に他の生徒との関係性や社会的な問題が生じることもあります。教師として，早期に対応することが求められます。
2 教師の対応の基本姿勢
共感と信頼の構築
まず，教師は児童生徒の気持ちに寄り添い，共感する姿勢を持つことが重要です。「君がその食べ物を嫌う理由を教えてくれる？」「その気持ちはよくわかるよ」という言葉は，生徒の心に響きます。信頼関係を築くことで，児童生徒は安心して問題を共有できるようになります。
個別指導と柔軟な対応
児童生徒の状況に応じて，個別の指導計画を立てることが求められます。画一的な対応ではなく，個々のニーズに応じた柔軟な指導を行うことで，効果的なサポートが可能となります。
3 具体的な声掛けと指導技能
励ましとポジティブフィードバック
児童生徒が努力している点や，少しでも進歩した点を見逃さず，積極的に称賛することが大切です。「今日は少しだけでも食べてみたんだね，すごいよ」「苦手な食べ物に挑戦してみた勇気は素晴らしい」といった具体的なフィードバックは，児童生徒の自信を高めます。
少量からの試食と段階的な挑戦
大きな量を一度に食べるのではなく，少量から試してみることで，児童生徒の抵抗感を減らすことができます。「まずは一口だけ試してみよう」「今日はこれだけでいいから，少しずつ慣れていこう」といった具体的な声掛けで，段階的な挑戦を促します。
食育の推進と興味の喚起
食べ物の好き嫌いを減らすためには，食育を推進し，食べ物に対する興味を喚起することが重要です。「この野菜にはこんな栄養があって，体にとても良いんだよ」「この料理の作り方を知ると，もっと美味しく感じるかもしれないよ」といった情報提供を通じて，児童生徒の関心を引きます。
楽しい食事環境の提供
楽しい食事環境を提供することで，児童生徒の食べ物に対するポジティブな態度を育むことができます。「みんなで一緒に食べると，美味しさも倍増するね」「給食の時間を楽しい時間にしよう」といった声掛けで，食事を楽しい時間にすることができます。
家庭との連携と支援
家庭環境が食べ物の好き嫌いに影響を与える場合，家庭との連携も重要です。保護者とのコミュニケーションを通じて，家庭での食事支援を促すことが求められます。「お子さんが家でどのように食事をしているか，一緒に確認してみてください」「家庭でも少しずつ新しい食べ物に挑戦する機会を作っていただけると，お子さんの成長につながります」といったアドバイスが効果的です。
ここからは実際の場面に即した実践的な指導について解説します。
A 実践例とケーススタディ
ケース1：味覚や食感の問題
ある児童が特定の食材の食感が苦手で，その食材を避けている場合，教師はまず児童の感じている問題を理解します。「その食感がどうしても苦手なんだね，分かるよ。少し違う調理法で試してみるのはどうかな？」と共感を示します。そして，「今日は少しだけ試してみよう。例えば，スープに入れると食感が変わるかもしれないよ」と提案します。
ケース2：過去の経験による嫌悪感（けんおかん）
過去に食べ物で嫌な経験をした児童に対しては，その経験を共有させることが重要です。「前にその食べ物で嫌な思いをしたんだね。それは大変だったね」と共感を示します。そして，「その経験を乗り越えるために，少しずつ新しい挑戦をしてみよう」と励まします。
ケース3：家庭の食文化や習慣
家庭で特定の食材が日常的に使われていない場合，教師はその背景を理解し，児童が新しい食材に慣れる手助けをします。「家ではこの食材をあまり食べないんだね。でも，学校で試してみるのもいい経験だよ」と促します。また，「家庭でも少しずつ新しい食材を取り入れてみるのはどうかな？」と保護者に提案します。
ケース4：アレルギーや食物不耐症（しょくもつふたいしょう）
アレルギーや食物不耐症が原因で特定の食材を避けている場合，安全を第一に考え，無理強いをしないことが重要です。「君の健康が一番大切だから，無理に食べなくても大丈夫だよ。でも，他の食材で栄養を補える方法を一緒に考えよう」とサポートします。
＊食物不耐症とは，特定の食べ物を消化できず，食べることに耐えられない状態を指します。
B 児童生徒の食事意識を高めるための具体的な声掛け
栄養の重要性を伝える
食事の栄養バランスが健康にどれほど重要かを伝えることで，児童生徒の意識を高めます。「この野菜にはビタミンがたくさん含まれていて，君の体を元気にするんだよ」「魚を食べると頭がよく働くようになるよ」といった具体的な栄養情報を伝えます。
食べることの楽しさを強調する
食事が楽しい時間であることを強調し，ポジティブな態度を育むことが重要です。「今日は新しい料理を一緒に楽しもう」「みんなで食べると，もっと美味しく感じるよ」といった声掛けで，食事の楽しさを伝えます。
成功体験を共有する
児童生徒が新しい食べ物に挑戦し，成功した体験を共有することで，自信を持たせます。「今日は初めてブロッコリーを食べられたね，すごいよ」「少しずつだけど，新しい食べ物にも慣れてきたね」と称賛します。
C 教師の指導技能の向上
継続的な研修と学習
教師自身が継続的に研修や学習を通じて，指導技能を向上させることが重要です。最新の栄養学や食育の方法を学ぶことで，児童生徒に対する効果的なサポートが可能となります。
同僚との情報共有
他の教師との情報共有や意見交換を通じて，効果的な指導方法を共有することも大切です。定期的なミーティングや勉強会を通じて，指導方法の改善や新しいアプローチの発見を促進することができます。「この児童にはどのようなアプローチが効果的か」といった具体的なケースについて情報を共有することで，教師全体の指導力が向上します。
児童生徒との信頼関係の構築
教師と児童生徒の間に信頼関係を築くことは，指導の効果を高めるために不可欠です。日常のコミュニケーションを大切にし，児童生徒が安心して相談できる環境を整えることが重要です。「いつでも相談してね」「君の話を聞くことが私の役割だから，遠慮しないで」といった日常的な声掛けが，信頼関係を築く土台となります。
D 実践的な指導のアプローチ
食育活動の推進
食べ物の好き嫌いを減らすためには，食育活動を推進し，児童生徒に食べ物や栄養について学ばせることが重要です。授業や特別活動を通じて，食材の栄養価や健康への影響について学ぶ機会を提供します。「今日は野菜の栄養について学ぼう」「この果物にはどんな栄養が含まれているか知っている？」といった質問を投げかけ，興味を引きます。
給食の時間を活用する
給食の時間は，児童生徒に新しい食べ物を試す機会を提供する絶好の場です。給食の時間を楽しい時間にするために，ゲームやクイズを取り入れることが効果的です。「今日のメニューにはどんな栄養が含まれているかな？」「給食クイズで勝った人には特別な賞品があるよ」といった声掛けで，食事を楽しみながら学ぶ環境を作ります。
親子での共同活動
家庭との連携を強化するために，親子で参加できる食育イベントやワークショップを開催することが有効です。親子で一緒に料理を作ったり，新しい食材を試したりすることで，家庭内でも食育が進むようにします。「次の週末に親子で料理教室を開くから，ぜひ参加してみてね」「家でも一緒に新しい料理を作ってみよう」といった案内を通じて，家庭での取り組みを促します。
食べ物の話題を日常会話に取り入れる
日常会話の中で食べ物について話題にすることで，児童生徒の興味を引くことができます。「昨日，新しいレシピを試してみたんだけど，とても美味しかったよ」「君の好きな食べ物について教えてくれる？」といった軽い話題で，食べ物に対する関心を高めます。
成功体験の共有と称賛
児童生徒が新しい食べ物に挑戦し，成功した体験をクラス全体で共有し，称賛することが効果的です。「今日はみんなで新しい食材を試してみました。誰が一番勇気を持って挑戦できたか見てみよう」「このクラスで一番多くの新しい食べ物を食べた人には特別な称賛を贈ります」といった取り組みを通じて，成功体験を共有し，クラス全体で称賛します。
まとめ
食べ物の好き嫌いが激しい児童生徒に対する教師の対応は，多角的で柔軟なアプローチが求められます。共感と信頼の構築，具体的な声掛けや指導技能の実践，家庭との連携，そして継続的な研修と学習を通じて，教師は児童生徒の食事意識を高め，健康的な食習慣を促進することができます。具体的な声掛けとしては，努力の認識，ポジティブな未来の示唆，具体的なアクションの促し，感情に寄り添うことが挙げられます。
さらに，食育活動の推進，給食の時間の活用，親子での共同活動，日常会話での食べ物の話題の取り入れ，成功体験の共有と称賛といった具体的な指導のアプローチを取り入れることで，児童生徒の食べ物に対するポジティブな態度を育むことができます。
教師としての役割は，単に知識を伝えるだけでなく，児童生徒一人ひとりの成長を支援し，健康的な未来への希望を持たせることです。これらのアプローチを実践することで，児童生徒が自信を持ち，積極的に新しい食べ物に挑戦する姿勢を育むことができるでしょう。
＊このレポートでは一般的な食べ物の「好き嫌い」のある児童生徒への対応について解説しました。身体的な特質があるなどの特殊なケースは当てはまらないこともありますのでご承知おきください。
