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社会参加から学ぶ編・・ボランティアに学ぶ「見返りを求めない心」〜優しさがめぐる社会を育てる“無償の行動力”〜【社会参加型教育プログラム設計ガイド付き】

  
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社会参加から学ぶ編・・ボランティアに学ぶ「見返りを求めない心」〜優しさが...

キーワード:
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はじめに:あなたはなぜ「誰かのために」動くのか?

「ありがとう」の言葉も、SNSの“いいね”ももらえないかもしれない。それでも誰かのために動きたいと思う。そんな経験はありますか?ボランティア活動は、報酬もなく、地味で、時に肉体的にも大変です。それでも人はなぜ他者のために行動できるのでしょうか。

「見返りを求めない心」――それは単なる自己犠牲ではなく、むしろ自分を育て、心を豊かにする学びの機会でもあります。

このブログでは、ボランティアの現場で得られる教育的価値を“家庭・学校を飛び出した社会参加の学び”として捉え直し、国内外の実例を交えながら、読んで考えたくなるような記事として紹介します。

第1章:ボランティア活動とは?教育としての本質に迫る

まず、ボランティアとは何でしょうか?語源はラテン語の「voluntas(自発的な意思)」。つまり「誰かに強制されず、自分の意志で誰かのために動く行為」です。

日本では災害支援・地域清掃・子ども食堂などさまざまな活動があり、中学生や高校生にも参加が推奨されています。しかしここで注目したいのは、「やる内容」よりも「やる姿勢」。

ボランティアは「見返りがない」ことが前提ですが、実はこの“無償”こそが、非認知能力(共感力・内発的動機・自己肯定感)を育てる最高のフィールドなのです。

第2章:「見返りを求めない心」が育つ理由

「見返りを求めない」行為には、いくつかの学びの要素が隠れています。

◆ ① 自己決定と内発的動機

報酬がある仕事や勉強と異なり、ボランティアは「自分でやると決める」行為。つまり、動機が内側から湧き出てくるのです。
→ 「自分で選んで、自分で動く」経験は、将来の進路選択にも直結します。

◆ ② 他者理解と共感力

たとえば被災地での支援活動では、困っている人の話を聞くことが求められます。「この人のために何かしたい」という気持ちは、共感の第一歩。社会で必要とされる“相手の立場に立つ”力が自然と養われます。

◆ ③ 感謝されなくても「自分が納得する」体験

一生懸命やったのに、誰にも気づかれなかった――でも「自分が納得できる行動だった」と思えると、自己肯定感が高まります。
→ 外的評価ではなく、“内的報酬”があることを体感するのです。

ボランティアは、人から言われてやるのではなく「自分でやると決める」行為

第3章:ボランティアを通じて得られた具体的な成果

◯ 高校生のケース(地域福祉ボランティア)

地元の高齢者施設で1年間、月に1回訪問するボランティアを続けた高校2年生のSさん。最初は戸惑っていたものの、会話を重ねるうちに「何か役に立てることはないか」と自ら声をかけるように。その後、企画チームにも入り、施設で“高校生カフェ”を実施。自分から提案・計画・運営するという大きな経験となりました。

得られた変化:
• 他者に喜んでもらえることが「自分の喜び」となる
• 誰かの役に立つ経験が、将来の福祉系進路選択の決め手に
• 「ありがとう」がなくても、自分の中に“やってよかった”という確信

◯ 中学生のケース(清掃活動)

地域のごみ拾い活動に毎月参加する中学生Tさん。雨の日でも黙々と歩道を掃除する姿に、近所の人が声をかけてくれるように。「誰かが見ているわけじゃない。でも、やってると気持ちがいい」そんな言葉を残しました。

得られた変化:
• 目に見えない価値を大切にできるようになった
• 友だちとの連帯感が強まり、クラスでも積極的に発言できるように
• 自信と責任感が育ち、リーダーシップを発揮

第4章:世界に学ぶ「見返りを求めない心」の教育

🇺🇸 アメリカ:必修科目としてのボランティア

多くのアメリカの高校では「Community Service(地域奉仕)」が卒業要件。1年間で50時間以上の活動を義務づける学校もあり、「報酬を求めず人のために動くこと」が、人格形成の重要要素とされています。

→ 特に、自分の住む社会に関心を持ち、能動的に関わる姿勢が養われると評価されています。

🇫🇮 フィンランド:子どもと高齢者の世代間交流

フィンランドの一部の学校では、小中学生が高齢者施設での活動を体験。掃除、読書、会話など簡単なことから始め、“感謝されなくても、心が通じる喜び”を味わう設計がされています。

→ 「ありがとう」の代わりに返ってくるのは、笑顔と沈黙の時間。その中にある深い学びが子どもたちの心を育てます。

🇯🇵 日本:東日本大震災以降の学生ボランティアの広がり

震災後、大学生や高校生による現地支援が全国的に活発化。現場では、「何もできなかった自分に悔しさを感じた」という声が多く、その後、「だからもっと勉強しよう」と進路が明確になった事例も多数。

→ 無償の活動を通じて「自分に何ができるか」を問う、重要な機会になっています。

「報酬を求めず人のために動くこと」が、人格形成の重要な要素

第5章:家庭・学校でできる「見返りを求めない心」の育て方

✅ 家庭でのアプローチ

• 「誰かのために何かした」体験を夕食時に話し合う
• 「ありがとうを言われた?」より「自分はどう感じた?」と尋ねる
• 小さな“無償の行動”(お皿洗い・買い物お手伝い)を認める

✅ 学校・地域での応援

• 学校で“見返りのない活動”を称える掲示や表彰
• 地域ボランティアの紹介/参加ポスターの掲示
• 体験後のふり返りワーク(「自分の心がどう動いたか?」を記述)

まとめ:見返りを求めない心こそ、強くやさしい生きる力

ボランティアは誰かの役に立つ活動ですが、実は最も成長するのは「自分自身」かもしれません。

「ありがとう」がなくても動ける人。見返りを期待せずに行動できる人。そんな人がいる社会は、きっとやさしく、強く、持続可能です。

だからこそ、今こそ「見返りを求めない心」を育てる教育が必要です。それは家庭でも、学校でも、地域でも、すぐに始められる“学びの一歩”です。


【社会参加型教育プログラム設計ガイド】

📘 概要:

このガイドは、地域社会と連携しながら、児童・生徒が自ら社会と関わり、非認知能力を育てるための教育プログラムを設計・実施するための手引きです。

📌 内容構成(抜粋)

1. 基本方針
•社会課題に主体的に関わる力
•共感・協働・貢献の精神を育成
•無償の行動を通じて“内発的動機”を育てる

2. 教育目標
•地域社会への関心と参加意識の醸成
•他者理解と共感力の育成
•自己効力感と責任感の向上
•持続可能な社会の担い手育成

3. モデルプログラム構成例
•事前学習:地域リサーチ、グループ討議
•体験活動:高齢者施設交流、子ども食堂支援、環境美化など
•ふりかえり:活動記録、グループ発表、改善検討会

4. 指導者の役割
•ファシリテーターとしての支援
•学習と生活の接続(意味づけ)
•感情面・社会性の成長支援

5. 評価方法
•姿勢とプロセス重視の評価観点
•自己評価+他者フィードバックの導入
•地域の視点を取り入れた評価

💡 活用シーン

• 総合的な学習の時間/探究学習/道徳・特活の連携
• 教育委員会/地域コーディネーターとの連携型企画
• 中高生のキャリア教育・進路学習プログラムの一環として活用可能