世界に学ぶ、自己肯定感の育て方【ワークブック付き】
日本では、自己肯定感が低いとされる子どもや若者が少なくありません。しかし、世界に目を向けてみると、国全体で子どもたちの心の育ち=自己肯定感を支える教育政策や社会の取り組みが進められている例が多く存在します。
ここでは、教育先進国とされるフィンランド、アメリカ、オーストラリアの取り組みを詳しく紹介しながら、日本でも活かせるエッセンスを一緒に探っていきましょう。
このブログは、前回の「自己肯定感を高める魔法の声かけと習慣とは?毎日がもっと楽しくなる実践ヒント!」の続きです。ここでは、フィンランド、アメリカ、オーストラリアにおける「自己肯定感の育て方」について詳しく解説しました。
*巻末に、「子どもから大人まで活用できる“自己肯定感向上ワークブック”(PDF資料)」を掲載しましたので、ダウンロードしてご活用ください。
1章 フィンランド:「比較」よりも「自分らしさ」を大切にする教育
■ 背景
OECD(経済協力開発機構)が行う国際学力調査(PISA)で常に上位にランクインしているフィンランド。しかし、彼らの教育において重視されているのは、単なる「点数」ではありません。
子どもたちの幸福度と自己肯定感を第一にした教育環境が、学力にもつながっていると評価されています。
■ 取り組み内容
• テストが少ない/順位をつけない
→ 競争よりも自己理解に重点を置く
• 個別学習支援が徹底
→ 得意な子も苦手な子も、自分のペースで学べる
• 教師は“評価者”でなく“伴走者”
→ 「あなたらしい頑張りだったね」というフィードバックが基本
• 自己表現・自己決定の機会を豊富に
→ 授業内の発言、学び方の選択肢、学校運営への参加など
■ 成果
• 子どもたちは学校を「安心できる場所」と感じている割合が非常に高い
• 国民の約80%が「子どもにとって学校は自尊心を育てる場所」と回答
• 高校生の学校生活満足度はOECD内でトップレベル
■ 学びのポイント
自己肯定感を育てるには、評価ではなく理解・共感・対話が重要であるという視点を日本にも取り入れることができます。
2章 アメリカ:SEL(社会性と情動の学習)の全国的普及
■ 背景
アメリカでは、子どもの暴力問題や精神的不安定が社会課題となっており、1990年代から「学力」だけでなく「心の教育」に注目が集まりました。
そこで登場したのが、SEL(Social and Emotional Learning)=社会性と情動の学習です。
■ SELとは?
SELでは次の5つの能力を養うことが目標です。
- 1. 自己認識力(Self-Awareness):自分の感情や強みを知る
- 2. 自己管理力(Self-Management):感情や行動を適切にコントロールする
- 3. 社会的認識力(Social Awareness):他者の気持ちを理解する共感力
- 4. 対人関係スキル(Relationship Skills):協力、意思疎通、問題解決
- 5. 責任ある意思決定(Responsible Decision-Making):良心に基づいた判断
■ 実践例(小学校~高校)
- 朝の会で「気持ちの天気予報」を発表(例:「今日は少しどんよりしています」)
- 教室に「感情カード」や「クールダウンスペース」を設置
- 喧嘩のあとに「どう思った?」「相手はどう感じた?」という対話タイムを導入
- 学級通信に「今週のがんばった感情コントロール大賞」などを紹介
■ 成果
- CASEL(全米SEL教育団体)によると、SELを取り入れた学校の児童は:
- 問題行動が10~20%減少
- 学業成績が平均11%向上
- 学校生活満足度が大きく向上
- 教師からも「クラスが落ち着き、指導がしやすくなった」という声が多い
■ 学びのポイント
感情に気づき、表現する力が自己肯定感の土台になります。日本の教育現場でも、朝の会や帰りの会にSEL的アプローチを加えることが可能です。
3章 オーストラリア:「Wellbeing Week」で心の健康週間
■ 背景
ストレス社会といわれる現代、子どものメンタルヘルスが国家的課題となりつつあります。オーストラリアでは、予防的な心のケアを教育現場から取り入れることが重要とされ、「Wellbeing Week(ウェルビーイング週間)」が広まりました。
■ 取り組み内容
- 年に1~2回、学校全体で「心を育てる1週間」を設ける
- 実施される主なプログラム:
- アートセラピー(絵や粘土で自由に表現)
- ヨガや呼吸法(リラックスと自己調整力を高める)
- 感謝ワークショップ(感謝の手紙を書いて贈る)
- 自己肯定感アップゲーム(自分の長所を書いて共有)
- 森林散策や自然観察(心を落ち着ける「グリーンケア」)
■ 成果
- 生徒の約85%が「この1週間が終わったあと、気持ちが明るくなった」と回答
- 教師のバーンアウト予防にも効果
- 翌月の「欠席率」が低下し、「対人トラブルの報告件数」も約30%減少
■ 学びのポイント
年に1度でも「心を見つめ直す週間」があることで、自己肯定感を定期的にリセット&回復できる仕組みになります。家庭や地域活動にも応用可能です。

【各国のまとめ】日本でもできる、世界からのヒント
国名 取り組みの主軸 日本への応用ヒント
フィンランド:比較しない教育、対話重視 「あなたらしさ」を見つける声かけを
アメリカ:SEL(感情教育)のカリキュラム 朝の会に「気持ちの共有」時間を
オーストラリア:心の健康週間(Wellbeing Week) 家庭でも「こころの休日」を導入
おわりに:世界に学び、日本に根付かせる自己肯定感教育
「自己肯定感を育てること」は、学力向上のための“手段”ではなく、人生を生きるうえでの“土台”です。世界では、社会全体で「心の育ち」を支える仕組みが広がっています。
日本でも、声かけや習慣、そして教育や家庭での小さな工夫を通して、「自己肯定感が高い社会」を目指すことは十分に可能です。
明日、あなたのひと言が、誰かの“自分を好きになる一歩”になるかもしれません。