実はあまり知られていない「オゾン層の破壊」とは?
環境問題を考えるとき,必ずといっていいほど出てくる言葉が「オゾン層の破壊」です。
みなさん,言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
オゾン層の破壊が環境に与える影響はとても大きく,環境問題を考えるときのキーワードになります。今回は,オゾン層の破壊についてわかりやすく解説します。
あなたは,この文章を読むことで,「オゾン層」または,「オゾン層の破壊」についての知ることができます。
オゾン層って何だろう?
オゾン層は,空の高い場所(約10~50km)にある成層圏にあるオゾンの層です。
オゾンとは,酸素原子が3個ついた気体です。酸素原子が2個ついた気体は酸素であり,生物にとって必要な気体ですが,オゾンは生物が吸い込むと有害になるものです。
オゾンを吸い込むと肺の奥まで届き,粘膜を刺激して,のどの痛みや老化を促進するといわれています。ただし,存在するオゾンの90%以上は成層圏に集まっています。成層圏にあるオゾン層は,太陽が放つ強烈な紫外線を吸収し,地球に生きる生物を紫外線から守っています。
オゾンを直接吸い込むことは有害ですが,オゾン層にあるオゾンは,地球上の生物を紫外線から守っているのです。つまり,オゾン層は,生物が生存する上でとっても大切なものであることがお分かりになると思います。
環境問題とオゾン層の破壊との関係
オゾン層があることで,地球に届く紫外線量は少なくなっています。しかし近年,オゾン層の破壊が進み,オゾン層にオゾンホールと呼ばれる穴があいていることがわかりました。
オゾンホールは,オゾン層の破壊によって太陽の紫外線が直接地球に降り注ぐ穴になります。
紫外線は,日焼けや免疫機能低下などの急激にあらわれる影響以外にも,長期的に浴びることで腫瘍や白内障などの病気を引き起こすことがわかっています。
しばしば,オゾン層の破壊は地球温暖化と直接関係があると考える人がいます。たしかに,オゾン層の破壊が進み,太陽の紫外線が直接地球に降り注ぐと気温が上昇するイメージがあります。しかし,国立環境研究所地球環境研究センターによると,オゾン層の破壊によって増える太陽のエネルギーは,さほど多くはないといわれています。
実は,オゾン層の破壊自体よりもオゾン層の破壊の原因となったフロンガスが地球温暖化や環境問題と深い関係があるのです。
オゾン層の破壊の原因と対策
オゾン層の破壊の原因は,地球上から排出されたフロンガスにあります。
フロンガスは1928年につくられた人工の気体です。とても安定している気体で,エアコンなどの冷媒に使われてきました。しかし,フロンガスには,塩素が含まれています。
放出されたフロンガスは成層圏に届き,紫外線によって塩素が分解されてオゾン層を破壊します。
また,フロンガスは温室効果がとても高い気体であることがわかりました。温室効果ガスといえば二酸化炭素を思い出しますが,フロンガスは,二酸化炭素の1810倍のパワーを持っています。オゾン層の破壊は,地球上に生きる生物にとって,考えるべき環境問題ではありますが,それと同時にオゾン層の破壊の原因となったフロンガスに対する対策も必要となるのです。
フロンガスの対策は,使われたフロンガスの回収と再生がポイントです。そして,フロンガスに替わる冷媒を使うことが一番の対策となるのです。
環境問題のカギ「オゾン層」を守るためにできること
フロンガスの対策は,1987年のモントリオール議定書をきっかけにどんどん進められました。
フロンガスには,特定フロン(HCFC)と代替フロン(HFC)という2種類のフロンがあります。オゾン層の破壊に直接関係する特定フロン(HCFC)については,先進国は2020年までに全廃止を目指してきました。一方の代替フロン(HFC)はオゾン層の破壊には関係のない物質です。
しかし,地球温暖化には強い影響がある物質であり,早急な対応が求められています。
HFCについては,先進国は,2036年までに85%の削減を目指すことになっています。日本では,85%の削減を達成するために,「オゾン保護法」を改定し,規制を厳しくしました。しかし,実際は減るどころか排出量は増えています。理由は,特定フロン(HCFC)の排出をおさえるために代替フロン(HFC)が使われるようになったからです。
代替フロン(HFC)の排出をおさえるためには,さらなる転換が求められるのです。
そして,代替フロン(HFC)にかわるものとして登場したのが「グリーン冷媒」です。
大手電機メーカーや大学,そして研究機関は,オゾン層の破壊をすることなく,地球温暖化への影響も少ない新しい冷媒の開発を進めています。国は,経済産業省と環境省を中心として多額の予算を組んで取り組んでいます。
消費者の私たちが,オゾン層を守るためにできることは,地球にやさしいもの「ノンフロン」で使って作られている製品を購入することではないでしょうか。
ノンフロン製品には,ノンフロンマークがついています。そして,すでにフロンガスを含んでいる電化製品などを正しく処分してフロンを回収し再生させることです。不法投棄をせずに家電リサイクル法に基づいて,処分するときには購入した業者や小売店に引取りを依頼します。
おわりに
オゾン層の破壊は,宇宙規模の話であり,自分には関係ないと思う人がいるかもしれません。しかし,オゾン層の破壊や地球温暖化は,私たちの日常生活が深く関係しています。
自分が使う製品を見直すことが環境問題を考える一歩になります。
「オゾン層の破壊」を阻止するための一歩は,地球に生きる人,一人一人が考え,それを基に行動することによって,宇宙環境を守るという大きな一歩につながるのです。
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