引きこもりの方に対する”効果的なコミュニケーション”
はじめに
引きこもりの方々とのコミュニケーションのあり方は非常に繊細で重要な問題です。前回のブログでも「引きこもりの方への教育支援」について解説しました。
引きこもりとは,家庭に引きこもり,社会的な関わりを極力避ける状態を指し,特に日本ではこの問題が深刻化しています。今回は,引きこもりの方に対する効果的なコミュニケーションの方法について解説していきます。
1. 引きこもりの理解と共感
まず,引きこもりの方々の心理状態を理解し,共感することが重要です。
引きこもりには,社会的なプレッシャー,学校や職場でのいじめ,家庭環境など多くの要因が関与していることが多いです。
これらの要因を理解し,彼らの経験や感情に寄り添う姿勢を持つことで,信頼関係を築く第一歩となります。
コミュニケーションを図る前段階として,引きこもりの方ご自身の個人的な状況を理解することが,何よりも重要になります。
2. 無理な干渉を避ける
引きこもりの方々に対して無理に外出を促したり,過度な干渉を行ったりすることは逆効果です。
彼らは自己防衛のために引きこもりという行動を選んでいる場合が多く,急激な変化を求めることはストレスを増大させる可能性があります。まずは,彼らのペースに合わせ,少しずつ変化を促すことが大切です。
一部マスコミでも取り上げられている,引きこもりの方に対して,無理に連れ出すなどの過度な接触は逆効果だと思われます。理由は,円滑なコミュニケーションへ至る前に,引きこもりの方が心を閉ざしてしまうことが考えられるからです。心を閉ざしてしまうと本来の目的となる社会的な自律が阻害されてしまう可能性が低下してしまいます。
3. 安心できる環境を提供する
コミュニケーションを円滑にするためには,安心できる環境を提供することが必要です。
家庭内でのストレスを軽減し,穏やかな雰囲気を作ることが重要です。具体的には,家族間の対話を増やし,引きこもりの方が話しやすい雰囲気を作ることが挙げられます。
引きこもりの方の社会的な自律を促そうとするあまりに,「こうあるべき」と,一方的な考えを押し付けることがないように,周りの方達は,安心できる環境を整えることを配慮することが重要になります。
4. 小さな成功体験を積む
引きこもりの方々が少しずつ外の世界に興味を持つようになるためには,小さな成功体験を積むことが効果的です。
例えば,短時間の外出や,家族との短い会話から始めることが挙げられます。これにより,自己肯定感を高め,徐々に外部とのコミュニケーションに対する抵抗感を減らすことができます。ちなみに,自己肯定感とは,「ありのままの自分を受け入れる感覚」のことです。
引きこもりの方に対して,この自己肯定感を高めるためには,共感的に接し楽しい雰囲気作り心がけることです。
5. 専門家のサポートを活用する
引きこもりの状態が長期間続く場合や,家族だけでは対応が難しいと感じる場合は,専門家のサポートを活用することが重要です。
心理カウンセラーや精神科医,引きこもり支援団体などが提供するサポートを受けることで,適切なアドバイスや支援を受けることができます。
6. コミュニケーションの手段を多様化する
直接的な対話が難しい場合は,他のコミュニケーション手段を活用することも考えられます。
例えば,手紙やメッセージアプリ,SNSを通じたコミュニケーションなどがあります。これらの手段を活用することで,直接顔を合わせずにコミュニケーションを取ることができ,心理的な負担を軽減することができます。対面で会話することに苦痛を感じる場合は,メールやチャットなどのツールを活用することは大変有効です。さまざまな方法を取り入れることで,コミュニケーションの方法が多様になるでしょう。
7. 長期的な視点で支援する
引きこもりの解消には長期的な視点が必要です。
短期間での改善を期待するのではなく,長い時間をかけて少しずつ前進することを目指すべきです。このためには,家族や支援者が根気強くサポートを続けることが求められます。
事を急がず,引きこもりの方と一緒に,自分も成長する気持ちを持って支援することが重要でしょう。
8. 自己表現の機会を提供する
引きこもりの方々が自己表現する機会を提供することも大切です。
趣味や興味を共有する場を設けることで,自然な形でコミュニケーションを促すことができます。例えば,絵を描く,音楽を聴く,ゲームをするなど,彼らが興味を持つ活動を一緒に行うことが考えられます。支援する方は,世の中には「多様な価値観」がある事を自覚し,引きこもりの方の興味や関心に沿った自己表現のあり方を積極的に認めること重要です。
9. 自尊心の回復を支援する
引きこもりの方々は自尊心が低下している場合が多いため,自尊心の回復を支援することが重要です。「自尊心」とは,「自分自身を尊いと思う気持ち。つまり,自分自身を大切に思う気持ち」です。これは,能力があるとか,やる気があると言うこととは異なります。
引きこもりの方に対しては,この「自尊心」を育むこと,つまり自分で自分を「大切に扱う」気持ちを育てていくことが重要になるのです。
彼らの努力や進歩を認め,ポジティブなフィードバックを与えることで,自己肯定感を高めることができます。
10. 家族のケアも重要
引きこもりの方々を支援する家族自身もストレスを感じやすいため,家族自身のメンタルケアも重要です。
家族が健全な状態で支援を続けるためには,適度な休息や他の家族メンバーとの協力が必要です。また,家族が専門家のサポートを受けることも有効でしょう。
おわりに
引きこもりの方々に対するコミュニケーションは,述べてきたように彼らのペースに合わせ,共感し,安心できる環境を提供することが基本になります。
無理な干渉を避け,長期的な視点で支援を続けることが求められます。また,専門家のサポートを活用し,家族自身のケアも忘れずに行うことが重要です。
今まで述べてきたポイントを踏まえたコミュニケーションを通じて,引きこもりの方々が少しずつ社会とのつながりを取り戻す手助けができるよう支援したいものです。