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感覚・身体・五感から学ぶ編~触っただけで危険が分かる感覚教育~

  
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感覚・身体・五感から学ぶ編~触っただけで危険が分かる感覚教育~

キーワード:感覚教育/五感で学ぶ/身体感覚/危険察知能力/体験学習/生きる力/安全教育/非認知能力

はじめに

「考える前に,手が引っ込んだ」経験はありますか 
熱いヤカンに触れそうになって,思わず手を引っ込めた。ぬかるんだ地面に足を踏み入れた瞬間,「ここは危ない」と感じた。こうした判断は,頭で考えるよりも早く,身体が先に反応しています。

このブログで扱う「触っただけで危険が分かる感覚教育」とは,この身体に備わったセンサーを意識的に育てていく学びです。

近年,安全教育や探究学習の分野では,「知識として知っている」だけでなく,「感覚として分かる」力の重要性が再評価されています。

第1章 なぜ今,感覚教育が必要なのか

1-1 マニュアルでは補えない危険がある

現代社会では,「危険」は文章やマークで説明されることが多くなりました。しかし現実の危険は,
・微妙な温度
・かすかな振動
・触った瞬間の違和感

といった,言葉にならない情報として現れることがほとんどです。感覚教育とは,この「言葉になる前のサイン」に気づく力を育てる試みです。

1-2 五感は,最初から備わった学習装置

人は生まれながらに,五感を通して世界を理解します。

赤ちゃんが何でも触るのは,危険だからではなく,学習しているからです。ところが成長とともに,「触らない」「汚れるからやめなさい」と制限され,感覚を使った学びは次第に減っていきます。

人は生まれながらに,五感を通して世界を理解している

第2章 「触っただけで危険が分かる」とはどういうことか

2-1 判断のスピードが違う

感覚による判断は,論理的思考よりも圧倒的に速いのが特徴です。

「熱いと分かってから避ける」のではなく,「触った瞬間に避けている」。これは経験の蓄積によって,身体が学習している証拠です。

2-2 感覚は“訓練できる”

この能力は,才能ではありません。
・実際に触れる
・比べる
・言葉にして振り返る

という経験を重ねることで,誰でも育てることができます。

感覚による判断は,論理的思考よりも圧倒的に速い

第3章 集団・日常生活で活きる感覚教育

3-1 集団行動での安全度が上がる

感覚が育っている人は,
「なんとなく嫌な感じがする」
「ここ,少し危ない気がする」

といった違和感を早めに共有できます。この一言が,事故やトラブルを未然に防ぐことも少なくありません。

3-2 感覚を言語化する力が育つ

感覚教育では,「どう感じたか」を言葉にする時間を大切にします。

すると,
・自分の状態に気づく
・他者の感覚を尊重する
・集団で判断する

といった力が自然に育っていきます。

感覚が育っている人は,違和感を早めに共有でき、事故やトラブルを未然に防ぐ

第4章 実践による具体的な成果と満足度の向上

4-1 子ども向け体験学習での成果

触覚を使った安全体験プログラムでは,
・危険回避の反応が早くなった
・自分の感覚を信じて行動できるようになった
・活動後の振り返りが深まった

という成果が見られました。特に,「先生に言われる前に気づけた」という経験は,子どもたちの自信と満足度を大きく高めます。

4-2 大人・研修現場での変化

大人向けの研修でも,
「頭で考えすぎていたことに気づいた」
「身体のサインを無視していた」

という声が多く聞かれます。
結果として,無理をしすぎない判断ができるようになり,心身の負担軽減にもつながっています。

第5章 諸外国に見る「感覚を育てる教育」

5-1 北欧:屋外で五感を使う学び

北欧諸国では,屋外活動を通して,「触る」「感じる」「試す」ことが教育の中心にあります。危険も含めて体験し,判断力を育てる姿勢が特徴です。

5-2 ドイツ:身体感覚を重視した安全教育

ドイツでは,工具や素材に実際に触れながら,「この感触は危ない」「ここまでなら安全」という境界を学びます。知識より先に,身体が覚える設計になっています。

5-3 ニュージーランド:自然と対話する教育

ニュージーランドでは,自然を管理対象ではなく,「感じ取り,対話する存在」として捉えます。感覚を使った判断は,生きる力そのものと考えられています。

北欧諸国では,屋外活動を通して,「触る」「感じる」「試す」ことが教育の中心

第6章 今日からできる感覚教育のヒント

6-1 「触って確かめる」時間を取り戻す

日常生活の中で,
・温度
・重さ
・硬さ
・滑りやすさ

を意識的に感じてみてください。それだけでも,感覚は少しずつ目を覚まします。

6-2 感覚を否定しない

「気のせい」「考えすぎ」と片づけず,「そう感じたんだね」と一度受け止める。この姿勢が,感覚を育てる土壌になります。

おわりに

身体は,最初の教師である
触った瞬間の違和感,足裏から伝わる不安,肌で感じる危険。それらは,誰かに教わる前から,私たちの中にある最初の先生です。

感覚教育とは,新しい能力を足すことではなく,もともと持っていた力を,思い出す学び。
もし今日,「ちょっと嫌だな」と感じる瞬間があったら,それは,あなたの身体がくれた大切なメッセージかもしれません。

その声に,少しだけ耳を澄ませてみてください。


参考文献(引用理由)

1.デューイ,J.(1958)『経験と教育』松野安男訳,岩波書店.
(身体経験・感覚を基盤とする学びの理論的土台)

2.日本野外教育学会(編)(2015) 『野外教育学研究の理論と実践』杏林書院.
(自然体験・感覚を通した判断力・安全教育の実践知)

3.佐藤学(2012) 『学びの共同体―学校を改革する』岩波書店.
(感覚や違和感を共有できる集団の学び)

4.文部科学省(2020) 『主体的・対話的で深い学びの実現に向けた学習指導要領解説(総論編)』文部科学省.
(感覚や違和感を共有できる集団の学び)

5.秋田喜代美(2013) 『授業研究と教師の学び』岩波書店.
(感覚体験を振り返り,学びに変換する方法論)