自然とサバイバル編・・釣れない釣りに学ぶ「忍耐教育」〜 静かなる“待つ力”が子どもを成長させる〜
キーワード:
忍耐教育、非認知能力、釣れない釣りの価値、子どもの我慢力の育て方、家庭でできる自然教育、フィンランド 自然教育、釣りで育つ観察力・粘り強さ、待つことの教育的意義
はじめに:「釣れない釣り」にこそ、教育が詰まっている
最近、「釣り」にハマる子どもが増えています。しかし、その多くは“釣れる釣り”です。管理された釣り堀で、餌を垂らせばすぐに魚がかかる。成功が保証された環境。
──たしかに楽しい。でも、それだけでいいのでしょうか?一方で、「釣れない釣り」には、人を育てる力があると気づく大人も増えています。1時間、2時間、3時間…魚の反応がないまま竿を握る時間。
自然を観察し、風を感じ、待ち、考えるその時間には、“忍耐”という教育の種がたくさん散らばっているのです。
今回は、「釣れない釣り」をテーマに、“待つことの意味”と“子どもの心の成長”に迫ってみましょう。
第1章:忍耐教育とは何か?なぜ今、必要とされているのか?
◆「待つ」ことができる子は、未来に強い
忍耐教育とは、文字通り「我慢することを通して、自分を律する力を育てる教育」です。現代社会は、スマホ・即時検索・ネット注文──「すぐに答えが得られる」「待たなくていい」仕組みで満ちています。
だからこそ、「待つ力」が育ちにくくなっています。
◆ 忍耐力が育つと何が変わるのか?
• 失敗しても、すぐにあきらめない
• 苦手なことにも、地道に取り組める
• 衝動的な行動が減り、自分をコントロールできる
• 他人と比較しすぎず、自分のペースで進める
これらはすべて、非認知能力(自制心・持続力・自己効力感)と呼ばれ、学力や職業成功に強く影響することが知られています。

第2章:「釣れない釣り」がもたらす教育的価値
◆ 釣りは“運”の世界──だからこそ子どもに最適
魚が釣れるかどうかは、自然次第。風、気温、水温、潮の動き、魚の気分・・・。どれだけ技術があっても、釣れない日は釣れません。
この“不確実性”が、子どもにとって貴重な学びになります。
◆ 「釣れない時間」が育てる3つの力
1. 観察力
「水の流れ」「風の向き」「浮きの動き」…集中して自然と向き合うことで、注意深さが育ちます。
2. 考察力
「なぜ釣れないんだろう?」と原因を考える力。餌を変える?場所を変える?タイミングを待つ?・・・自ら仮説を立て、実行し、ふりかえるプロセスが生まれます。
3. 忍耐力
成果が出ない時間を“投げ出さずに”過ごす力。目に見えない成長を、静かに積み上げることができるのです。
第3章:実際にあった!忍耐力が育った子どものエピソード
◆ 小学5年生の「川釣り日記」
1年に4回、父と一緒に渓流釣りに通った男の子。
・初回:3時間でボウズ(1匹も釣れない)→「もう来ない!」
・2回目:1匹釣れる→「うれしい!」
・3回目:また釣れない→「でも、前より考えてやった」
・4回目:4匹釣れる→「待った甲斐があった!」
この1年で、「すぐに投げ出さない」「環境を観察する」「道具の手入れを丁寧にする」といった変化が見られました。「釣れるようになったこと」よりも、「投げ出さずに続けたこと」に価値がある──これが、忍耐教育の真骨頂です。

第4章:家庭での「釣れない釣り」実践ガイド
◆ はじめてでもOK!「忍耐釣り」入門5ステップ
1. 目的は“釣れること”ではなく、“待つこと”と共有する
→ 「今日は1匹釣れたらラッキー」「何時間耐えられるか選手権!」など、工夫して伝える。
2. 道具選びも一緒に楽しむ
→ 子どもに「選ばせる」ことで主体性UP。
3. 最初は30分でもOK!徐々に時間を延ばす
→ 小さな成功体験を積み重ねることが大切。
4. 釣れない時間に“観察メモ”をとる
→ 水温、風、周りの人、エサの違いなどを記録。
5. 終わった後に“ふりかえりトーク”をする
→ 「何が楽しかった?」「難しかったことは?」と問いかける。
◆ ポイントは「成果主義」ではなく「過程主義」
「何匹釣れたか」ではなく、「どう過ごしたか」に価値を置く姿勢が、忍耐力を育てるための鍵です。
第5章:諸外国の「待つ教育」実践例
🇫🇮 フィンランド:森の中で「釣れない釣り」体験
自然教育を重視するフィンランドでは、“魚がいない池”での釣り体験も取り入れられています。
子どもたちは最初こそ不満げですが、次第に“無の時間”に順応し始め、「風の音を聞く」「鳥を観察する」「仲間と話す」ことに喜びを見出します。
教育者のコメント:
「結果を求める教育から、感じる教育へ。釣れないことも、学びのきっかけになる。」
🇨🇦 カナダ:キャンプと釣りを組み合わせた非認知教育プログラム
カナダの一部の公立学校では、野外学習として“湖釣り&反省ジャーナル”を組み合わせた授業を導入。釣れなかった子どもには、「どう感じた?どう乗り越えた?」をテーマに作文を書かせる。
教員いわく:
「釣れない体験こそが、自分と向き合うチャンスになる。」
第6章:教育現場での応用例と、家庭でできる工夫
◆ 教室でできる「釣れない体験」疑似版アイデア
• パズルに“あえて足りないピース”を入れておく
• ボードゲームで“待ち時間が長い”ルールを導入
• 「成功まであと少し」という設計で粘り強さを鍛える
◆ 家庭でできる日常的“忍耐トレーニング”
• 焼き芋や煮込み料理を一緒に作る
• 植物を育てる(毎日少しずつ水やり)
• 昔ながらの“昆虫採集”や“ホタル探し”
→ いずれも「待つ・見守る・我慢する」感覚を養うのに最適です。
まとめ:「釣れない時間」こそ、心を育てる時間だった。
釣りは人生の縮図です。思い通りにいかない。努力しても結果が出ない。風が変わる。突然釣れる──。
そんな不確実で、気まぐれな“自然の相手”と向き合う中で、子どもたちは静かに、でも確実に育っていきます。「釣れなかったね」で終わらせず、「でも、よく耐えたね」と伝えること。
それこそが、家庭でできる最高の“忍耐教育”ではないでしょうか。