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自然とサバイバル編・・虫と出会って悲鳴をあげる前に学ぶ「多様性教育」〜 小さな命から“違い”を受け入れる心を育む授業〜【児童向け「虫の仕事図鑑」付き】

    
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自然とサバイバル編・・虫と出会って悲鳴をあげる前に学ぶ「多様性教育」〜 ...

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はじめに:なぜ虫を見ると悲鳴をあげてしまうのか?

キャンプや自然体験の場面で、「キャー!虫!」と叫ぶ子どもたちの声は、もはや風物詩。しかし、そこで立ち止まって考えてみましょう。

なぜ、私たちは虫を怖がるのでしょうか?
なぜ、嫌悪感を抱いたり、遠ざけたりするのでしょうか?

実はそこに、“自分とは違う存在をどう見るか”という多様性教育のエッセンスが隠れているのです。

虫という他者に出会った瞬間の反応は、社会の中で異質な存在と出会ったときの心の動きとどこか似ていませんか?今回は、自然の中で出会う虫たちを題材に、“多様性の受容”という教育的価値についてユーモアを交えて楽しく掘り下げていきます。(写真:子ども達に大人気の“カブトムシ”)

第1章:「虫」と「他者」はなぜ怖い?

虫への恐怖や嫌悪感は、見た目や動きの予測不可能さに起因します。同様に、自分と違う文化・考え・習慣を持った人々への戸惑いも、「未知」や「誤解」からくるものです。

虫嫌いの心理に共通するポイント:

• 予測できない動き(例:飛ぶ・跳ねる・這う)
• 見た目の「違和感」(足の多さ、形、色など)
• 害虫や毒虫への警戒心(経験に基づく)

これを社会的な“多様性”に置き換えてみましょう。

他者に対する心理的抵抗:

• 異なる言語や服装、習慣への違和感
• 行動のパターンが読めないことによる不安
• メディアなどの偏った情報による“危険視”

つまり、「虫に対する拒否反応」は、他者を理解する以前の“第一印象フィルター”とよく似ているのです。

第2章:自然体験で多様性を学ぶとはどういうことか?

🌿 自然には「いろんな命」がいる

• 見た目の違う昆虫
• 生き方の異なる植物
• 他を助ける虫(益虫)や一見地味な存在

自然の中では、「どれが偉い・正しい」という価値判断は存在しません。すべてが生態系の一部であり、役割を持ってそこに生きている。

それはまさに、人間社会における多様性の理想的な縮図と言えるでしょう。

🌍「虫=多様性の先生」として捉える

• カマキリは“捕食者”でもあるが、バッタを減らして植物を守る
• ミツバチは“働き者”であると同時に、自然の受粉を担うパートナー
• ダンゴムシは“汚れたところにいる”が、土壌の分解者として貢献している

こうした観察を通して、子どもたちは次のような視点を得ることができます:

「見た目で判断せず、その存在の意味を知ろう」
「自分と違っても、それはその子の生き方かもしれない」

第3章:実践事例とその教育効果

📘 日本の事例:千葉県・ある自然学校の「虫と暮らすキャンプ」

• テントサイトに虫が多く出るが、あえて殺虫剤を使わないルール
• スタッフが「その虫が何をしているのか?」を説明し、観察ノートに記録

成果:

• 最初は「怖い」と泣いていた子も、最終日には「カマキリの卵を守る」と言い出す
• 帰宅後の感想で「違いを知るって大事」「嫌いだけど理由がわかった」と記述
• 協働活動や人間関係でも“違い”を受け入れる態度が強まる

🌍 諸外国の例:

🇸🇪 スウェーデン:「森の幼稚園」における“虫との共存教育”

• 雨でも虫でも自然は“味方”として扱う
• 「虫も私たちの家族」という感覚を幼少期から育む

→ 生き物を排除しないことで、生命への共感力や相互依存感覚を形成

🇮🇳 インドのガンディー教育村

• 子どもたちに「虫を殺すな」と教えるのではなく、「虫の仕事」を観察させる
• 「存在には意味がある」という仏教的思想とつなげて、多様性の考え方を浸透

→ “違う=敵”ではなく、“違う=知らない”から始める姿勢を自然から学ぶ

第4章:虫と出会う前に「多様性のレンズ」を持つ方法

✅ 教育の中に取り入れるアイデア

• 虫図鑑ではなく「虫の仕事図鑑」を活用
• フィールドワークで「虫の役割を5つ探そう」ミッション
• 1匹の虫に名前をつけて、“その子の一日”を妄想する活動
• 家庭で「虫クイズ」を取り入れ、「知らないこと=面白い」と感じさせる

✅ 声かけの工夫

シーン NGな反応 推奨される声かけ

子どもが虫に悲鳴 「そんなの触っちゃダメ!」 「この子、何してるのかな?ちょっと見てみよう」
虫を避ける 「気持ち悪いよね」 「苦手でも、どんな仕事してるか知ってる?」
虫を殺そうとする 「ダメでしょ!」 「この虫がいなくなったら、何が困るかな?」

→ 恐怖や嫌悪を否定せず、“理解”の方向へ促す声かけがカギです。

さまざまな形態をしていることが昆虫の魅力、これは“ナガカツオゾウムシ”

第5章:虫との出会いが“人間関係”を優しくする?

興味深いのは、虫との出会いを通して「人との付き合い方」まで変わることです。

• 「見た目が怖い子」=虫に似てる? → 実は優しいかも
• 「話し方が違う子」=動きが違う虫? → でも必要な存在かも
• 「考えが合わない子」=違う進化の方向? → だからこそ大切かも

これは、「生物的多様性」を通して「人間的多様性」に共感するきっかけとなります。

嫌い」ではなく、「知らなかった」だけ。
「苦手」ではなく、「向き合い方を知らなかった」だけ。

その気づきが、他者との関係性を変え、社会全体を“やさしく”していきます。

まとめ:虫との出会いは、違いとの出会い

虫に出会ったとき、すぐに悲鳴をあげるのではなく、「なぜここにいるのか?」「何のためにいるのか?」を考えてみる。その習慣は、人と人との違いを尊重する土台にもなります。

虫は、地球でもっとも多様な命。

だからこそ、虫を通して学ぶ“多様性の受容”は、小さくても強く、美しい一歩になるのです。


【児童向け「虫の仕事図鑑」】

📘 内容紹介:虫の「見た目」ではなく「仕事」に注目!

このミニブックは、子どもたちが自然の中で出会う虫たちの「しごと=役割」を観察し、“気持ち悪い”“こわい”という感情だけでなく、命の価値や生態系への貢献を楽しく理解することを目的としています。

🐝 掲載されている虫とその「しごと」

虫の名前 仕事の紹介
・ミツバチ 花のミツを集めながら花粉を運ぶ「花の宅配便」🌸
・ダンゴムシ 落ち葉や土を分解する「そうじやさん」🧹
・テントウムシ アブラムシを退治する「畑のヒーロー」🥬
・アリ 落ちたものを運び、仲間と分ける「チームワーク名人」💪
・カマキリ 素早く虫を捕らえる「自然界のハンター」🎯
各ページに📝自由記入欄があり、実際の観察・発見を書き込めます。

🧠 ふりかえりパート

・どの虫の「しごと」が面白かったか?
・その虫が自然や人にどう役立っているか?
・虫の働きが自分たちの暮らしにどうつながっているか?
といった「考える力」「共感力」「つながりへの気づき」を引き出す問いを掲載。

🏫 活用例

• 自然観察ワークや里山体験の振り返りノートに
• 環境教育やSDGs学習の一環としての導入教材に
• 理科/生活科/総合的な学習の時間での「命の学び」実践に最適