「リカレント教育」と「拠(よ)り所」になる考え方
人が100歳まで生きるとされるこれから社会では,現状の60歳+αまで働くのではなく,生涯を通してもっと長い期間現役で働くことになると予想されています。
そのため,生涯にわたり働き続けることができる人材になるためにも,学ぶことを生涯にわたって続けることが不可欠になります。
そこで注目されているのが「リカレント教育」です。
リカレント教育とは,学校教育を人の生涯にわたって分散させようとする理念です。その本来の意味は,「職業上必要な知識・技術」を修得するため,フルタイムの就学とフルタイムの就職を繰り返すことであるとされます。
今回は,この「リカレント教育」について解説していきます。
働きながら学ぶ「リカレント教育」の重要性
厚生労働省が行った「人生100年時代構想会議」では,「2007年に生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されている,日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎える」と示されています。
続けて,「100年という長い期間をより充実したものにするためには,幼児教育から小・中・高等学校教育,大学教育,更には社会人の学び直しに至るまで生涯にわたる学習が重要」と示され,「リカレント教育」が注目されるようになりました。
【参考】人生100年時代構想会議中間報告
このように「リカレント教育」とは,回帰教育や循環教育,または学び直しの意味で表現されることが多く,働きながら学ぶ場合や学校以外での学びなど,幅広い意味合いで使用されます。
人生100年時代になり人の寿命が延びることにより,働く期間が現在の60歳+αより長くなると予想されることに伴う考え方です。
また,テクノロジーの進化や時代の進歩によって,仕事で必要とされるスキルが大きく変わり,これまでとは違う幅広い技能やスキルを習得する必要が生じてきます。今後,この傾向はますます高まってくるでしょう。
これまでのように,大学を卒業した後に,身につけた技能やスキルで働き続けるモデルが通用しなくなる確率も高くなることから,学校を卒業した後も新たな技能やスキルを身につけたり,身につけた技能やスキルを絶えずアップデートしたりしていく必要が高まっているのです。
こうした観点から,成人が働きながら学び直しをしていく「リカレント教育」が注目されるようになったのです。
しかし,日本では,諸外国のように質の高い「リカレント教育」を受けられる教育機関が限られていることから,日本政府は,この課題に対して各大学の役割や特色,及び強みの明確化を図って,「リカレント教育」を今まで以上に推し進めていくことが不可欠であるという考えに達したのです。
「リカレント教育」をどう考えるか
現在,日本ではまだ十分に浸透していない「リカレント教育」ですが,人生100年時代に突入するこれからの時代には,もっと一般化していく必要を感じています。
ただ,仕事で必要とされる技能やスキルといっても幅が広く,自分にとってどのような考えや知識,技能を身につけたら良いのか思いあぐねている人も多いのではないかなと感じます。
つまり,おっしゃることはわかるけど,具体的に「かちっ」と定まった考えが思いつかないという状態の方が多数なのかなと思うのです。
「拠り所」になる考え方とは?
その際の拠り所になる考え方をお示ししたいと思います。それは,次の3つの問いから成っています。この問いに沿って,今後に向けたあなた自身の思考を進めてみてください。
あなたのオリジナルの考えに思い至るかもしれません。
- 初めに,なぜあなたはそのことが必要と思ったのですか。
- 次に,なぜ他の人はそのことを行ってこなかったのですか。
- 最後に,それによって,だれが幸せになるのですか。
この問いは,落合陽一氏の著書『働き方5.0〜これから世界を作る仲間たちへ〜』にも書かれたもので,この中では,詳しく5つの問いを挙げています。
その5つの問いに応える答えることができれば,このテーマは価値あるものであるといえると落合陽一氏も述べています。詳しい内容はそちらを読んでください。
まとめ
人生100年時代では,人は100歳まで生きると同時に働く期間も延長されます。つまり,100歳まで生きると考えたとき,必然的に働く期間が現状の60歳+αより長くなるのです。
その際,生涯働き続ける人材になるためには,生涯学び続ける必要が生じます。その時の考え方が「リカレント教育」なのです。
これからは,働きながら学ぶ「リカレント教育」の考え方に立ち,新たな技能やスキルを身につけたり,今まで身につけた技能やスキルをアップデートしたりしていくことで,その時代に適した人材に絶えず更新していく必要が増していきます。
しかし,どのよう考えや知識を更新していくかについては,十分な考えに思い至っていない人が多いことが予想されるため,3つの問いに沿って自分の思いを進めていくヒントを示しました。
つまり,
- 初めに,なぜあなたはそのことが必要と思ったのですか。
- 次に,なぜ他の人はそのことを行ってこなかったのですか。
- 最後に,それによって,だれが幸せになるのですか。
です。
自身で考察を進めて,オリジナルな考えを導き出すための参考にして欲しいと思います。